介護のちから ~第4回~ 住環境とバリアフリー(1)
こんにちは。毎週コラム『介護のちから』をお届けする清水です。
今回は2回に分けて「住環境とバリアフリー」について、お話してみたいと思います。
はじめに
皆様は「高齢者の方々の住環境」と聞いて、どのような環境を思い浮かべますでしょうか?
「暖かい部屋で」、「通路が広くて」、「部屋にスペースが広くあって」なんて理想の環境を整えることは、なかなか上手くいかないものですよね。
ですが、高齢者の方々が住みやすそうにしているお宅を一つ一つ掘り下げていきますと、実は高齢者の方々にとって住みやすい住環境作りのルールが見えてきます。
今回のコラムは、住みやすい住環境の3つのポイントについて解説いたします。
廊下幅
足腰が弱くなってくると、まず最初に思い浮かべることは「車いすの利用」なのではないかと思います。
でも、家の中で車いすを使うとなると、家の中にどのくらいのスペースが必要なのか悩んでしまいますよね。
車いすが通過するのに必要最低限のスペースを「廊下幅」というのですが、廊下幅はいったいどれくらい必要と思いますか?
早速悩みますね。これは、80cm程といわれております。(現実的には、私は80cmの廊下幅ではなかなかうまく通れない現場をよく見てきましたが・・・。)
一般的に多く見られるのは、建築物移動等円滑化基準の義務基準として120cm以上は必要であるとされており、160㎝~180cm位あると余裕をもって車いすが通れるといわれております。
ここで、通路が狭くて困っている方には、「住宅改修制度」が使える場合があります。多くの自治体では、上限を20万円(負担割合に応じて自己負担が1割~3割)とした住宅改修制度が設けられていますので、近くの地域包括支援センター職員さんやケアマネジャーさんに聞いて検討してみられるのが良いかと思います。
段差
次は、「段差」についてです。
日本では、靴を脱いで家に入るため玄関には段差があり、今は少なくなってきたように見受けられますが廊下と部屋の境にも段差があるなど、段差の多い建築構造となっています。
普段何気なく生活していると気にならない段差も高齢者の方や車いすを利用される方には段差は不便を強いたり、時には転倒などの危険を引き起こす場合があります。
そこで段差があるところには段差がわかりやすいように「識別しやすい色(赤や黄色を使うことが多くあります。)」でマーキングすることが行われます。
また、特に危険な階段などでは黄色を基軸としたすべり止めテープを使用することも多いですし、逆に住宅のあちこちにある小さな段差には、ダイヤスロープという1cm単位で選択できる段差解消の福祉用具などを利用して、安心安全な住環境づくりをされる方も多くいらっしゃいます。
ダイヤロープはトイレの出入りや部屋の出入りの際に小さな段差に足を躓く「うっかりした転倒」を防止するために活用されることが多いです。また、小さな段差を解消させることは車いすでの移動をスムーズにすることにも活用されます。
ダイヤロープは購入して頂くことも可能ですが、福祉用具貸与業者からレンタルすることもできます。ダイヤロープを利用すると家の中の「小さな段差」による生活の差し障りが解消されると思います。
温度
住環境は季節によっても対応に違いがあります。冬の今の時期に特に注意したいことは、温度です。
部屋の気温は25℃前後を保ち、風邪をひかないように適温で過ごしましょう。湿度は55%~65%程に保っていただけると乾燥を防ぎつつ、ウイルス感染の予防もできます。
そして、何より一番この時期に注意したいのは「ヒートショック現象」です。ヒートショック現象は、急激な温度変化に身体が対応しきれずに心臓や血管の疾患が起こることをいいます。
家の中でも部屋の温度と廊下の温度は違いますし、特に温かい部屋と寒い浴室の温度には大きな違いがあります。浴室では暖房の効いた部屋と脱衣所の温度差による急激な温度変化は血圧の高低差や脈拍の急激な上下が、心筋梗塞や脳梗塞、めまい、けいれんなどを引き起こしてしまう場合があり、最悪のケースとして死亡に至る場合も少なくありません。「冬の時季にはくれぐれも要注意」です。
おわりに
この他にも住環境づくりには沢山の注意点がありますが、少し配慮をすることで生活がガラッと変わる場面もあるかと思います。
ご相談の際には、是非高齢者の事に詳しい地域包括支援センターの職員さんや、ケアマネジャーさんに相談してみてください。
次回は、住環境とバリアフリー第2弾としてバリアフリーについて触れたいと思います。
(清水勇耶)
プロフィール
清水勇耶(しみず・ゆうや)
ケアマネジャー。株式会社ワンダフルライフ代表取締役。みんなでケア開発者。
一人よりも二人より多くの方々の幸せのためにという法人理念の基、関わる皆様に介護業界がより良くなるようなご提案のできる仕事を心がけている。また、福利厚生としてLVMHグループの介護福利厚生、介護ロボットの活用、その他介護支援専門員問の研修・セミナーなども行っているなど、幅広い分野で活躍中。主な取得資格等:介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉主事、厚生労働省IOTロボット評議員、同省介護ロボット講師、AI・IOTシニアコンサルタント、ビジネスモデル検定1級、運行管理者